|
11月6日に「岡山国際サーキット」(去年までは岡山TIサーキット、と呼ばれていた1週3.7kmの変化に富んだ素晴らしいサーキットでした)にて行われた「モトルネッサンス」の「ローヤルエンフィールドクラス」に参戦してまいりました。世界規模で見ても「エンフィールドクラス」なんて初めての開催です。マイナー感を拭い切れないエンフィールドの面白さ、普段とは違う楽しみ方がある事を皆様方に啓発する為、またもう一つの目的はお金をそれ程掛けずに当社独自のチューンアップで何処まで戦えるかを試す為にも、関東勢を代表して出場せねばならぬ、と始めたプロジェクト。9月に行われた「タイムトンネル、ヴィンテージクラス」の優勝の余韻を引きずって片道約10時間、目指すは表彰台と張り切って出かけてきました。結果はこの参戦記を読んでみてくださいね。
10月の中旬以降からレーサープロジェクト計画が加藤主任の手に掛かり、本格的に?店の営業時間終了後の工場にて始まった。エンジン容積はベース車両の535ccのままで、ハイコンプピストンに。ハイカム、レース用プッシュロッド、ノーマルコンロッドをレース用に変更。クラッチを乾式にし、オープンプライマリーに変更。 ビックバルブ、ツインプラグ加工(ヘッドの加工作業はこの手の作業には定評のある「井上ボーリング」さんに依頼。無理な納期にも気持ちよく答えてくれて助かりました)。インテークとエキゾースト形状変更。クランクケース、オイルタンクにブリーザー加工など等。足回りはステム交換。FフォークはSR用に。スタビ替わりにステンレスフェンダー装着。リムはアクロンのアルミH型。リアもアルミH型にて18インチ化など等・・・。
こうやって活字にすると何の事は無い様に思えてしまうが、オイルポンプの交換作業一つ取っても部品の合せ面から削ってやらなければならず、また抵抗の軽減の為、部品一つずつ鏡面仕上げに拘る加藤主任の思惑も有り、瞬く間に時間が過ぎて行く・・・。
本来の完成目標日であった、10月27日の筑波で行われた「モト・ルネ走行会」の日にも未だエンジンが組み上がっていない状態で、本番出場が危ぶまれたのだが、休日返上、毎夜深夜までに及ぶ作業で11月の始めに何とかエンジンが組み上がり、在庫していたケイヒンの35パイの(多分2サイクルのモトクロス用)キャブを付けセッティング等は抜きにしてエンジンの音が聞けた次第。タイムリミットまであと僅か。毎夜、リポビタンDを飲み、眠気と戦いながら作業を黙々と続ける加藤主任であった・・・。
レース前日の5日に「岡山国際サーキット」にて1本分、30分だけだがスポーツ走行枠が用意されている。初めて走るコースでも有り、マシンのセッティングも出さなければならないので、是非とも5日土曜日の午後には現地入りしておきたいところだ。
シート、タンクのステー製作。バックステップも私の体格に合わせて1から作る。タコメーターのステーも勿論アルミ部材から削り出す。3日文化の日は、営業が終わっても息つく間も無く加藤主任の作業は、いつもの様に夜更けまで続く・・・。
明けて4日の朝、いつもより早く朝7時頃出勤すると作業場に明かりが。見ると作業リフトの上に完成されたエンフィールドが載っている!
ゼッケンカウル等、細かな箇所は抜きにしてもこれならセッティングに出かけられる状態だ。何としても完成させるつもりで、彼は徹夜で頑張ってくれたのだった!
急遽予定変更。これから仕事を抜け出す事になるが、過日にタイムトンネルが行われた「富士スピードウエイ」のショートコースに試運転並びに慣らし運転とセッティングを出しに行く事にする。
快晴の富士に着き早速、走行準備に掛かる。午後から2本の走行枠が取れたので、何とかまともに走れる様になる事を祈る。
1本目ではキャブのセッティングが思う様に出ず、またミッションは予算の関係でノーマルのままなのでバックステップとの相性か、遊びが多くて度々ミスをしてしまう(今の新車だと、ここら辺が改善されていて何も心配ないのだが・・・)。私の乗り方も悪いのかも・・・。
続けての2本目の走行でもやはりエンジンが吹け切らない。このままセッティングが出ずに終わってしまうのか。
思い切ってファンネルを取り去ってみる。今度は先程のグズツキが嘘の様に回転が上の方まで素直に回ってくれて、 しかも力強い!ファンネルのテーパー値が足りなくて上手く空気が吸えない状態だったのだろう。すっかり慣らし運転のことなど忘れて数周気持ち良く走り、走行時間が終了した。これなら、このまま岡山に持ち込んでも恥ずかしくは無いだろう。
富士を後にした時は、2人とも寝不足な顔に少し安堵の色が浮かんでいた。
富士より帰社し通常業務をこなしての閉店後、浮かび上がった問題点や整備の残り作業に取り掛かる。急がねば明日の岡山でのスポーツ走行に間に合わなくなってしまう。ぶっつけ本番だけは避けたいところだ。
一通りの作業が終わったのは日付が変わる頃だった。車両と工具等をバンに積み込み岡山に向け出発したのは午前1時半を回っていた。
連夜の作業で寝ていない加藤主任を後部座席で寝かせて途中休憩を取りながら東名高速、名神、山陽道をひた走りサーキットに着いたのは午前11時頃。土曜日の走行会という事もありパドック内は大混雑をしていて、関西方面はレースが盛んなんだな〜という印象を受けた。パドックの中程で「オーバーレーシング」さんのテントを見つけ声を掛けると「テントの中に車両を置いてください。場所をとって有りますから」との嬉しい言葉。
早速、荷物と車両を下ろし9月の富士以来の挨拶を交わす。
今日これからの事をレクチャーしてもらうがその間にも、加藤主任は早速、車両の点検を始めている。頼もしい限りだ。走行の前にエンフィールドレーサーたちと前日車検を受けに行く。勿論、何事も無く全車全てパスしたのは言うまでも無い。
いよいよエンフィールド達のスポーツ走行の時間。結局このクラスのエントリーは、うちを含めて4台という少し寂しい台数だが、今回が「初開催」ということでも有り、限られた時間内で個人の力でレーサーを作って参加するのはチョット難しかったのかも。
参加内訳は、オーバーさんが今年オランダに持ち込んだレーサー(612cc)にライダースクラブ誌編集長で元国際A級クラッシュキングの高橋聡氏(章典外参加)、オーバーの佐藤社長が普段待ち乗りにしている左5速ギヤ(635cc?)の車両に元岡山サーキット副支配人川野氏、そしてもう1台は、普段何かとお世話になっている佐藤社長ご子息、エンフィールド営業担当の佐藤健志氏の乗る右4速クロスミッション612ccと私の4台だ。
レースの方は混走となり、20台以上が出場するらしい。
走行時間となり晴天の岡山サーキットを緊張しながら、同じテント内の参加車両と他のヴィンテージクラスの車両と共に走り出す。このコースは1周3.7キロもあり筑波と違い高低差がとてもあり、しかも700メーターと600メーターの長い直線が2本も有り、さぞかし高速コースと思いきや、後半は筑波のインフィールド同様タイトコーナーの連続する大変変化に富んだ面白いサーキットである。最初はコースを頭に叩き込みながら徐々にスピードを上げていく。バックストレッチの700メーターの長いストレートは登りコーナーから続く事から、ギヤ比を現在手に入る中で一番高いギヤを組み込んできたのが裏目に出て、思ったより車速が伸びない。読みが甘かった。ストレートエンドで、トップギヤで吹け切るには程遠い状態。あと2丁落としても良い位だったかも。
しかし、段々とコースに慣れてくるとオーバーさん達のエンフィールドに追いつく事が出来るではないか。何とかライン取りを覚え、自分のレーサーのシフトにも慣れてきたかな、と思ったら走行時間が終了となった。あとは明日の天気を願うばかりだ。
翌朝、サーキット内に在る宿泊先のロッジで強い雨音に気づき目が覚める。昨夜遅くまで2人で呑んだ久しぶりのビールが未だ身体に残っている。頭が重い・・・。午前7時には身支度をして、急いで雨の中パドックに向う。パドックのテントでは、オーバーさん達が早々と車両等を運び込んでくれていた。(申し訳ない!)
雨脚が大分強くなってきたが、レースはタイムテーブルより少し遅れ気味だが順調に進んでいく。流石、好評を博しているリバーフィールドさんが主催しているレースだ。
他のクラスに出場しているオーバーレーシングの仲間達が雨の中の予選に出場して行く。
山の中のコースなので、雲が低くて手に届く様だ。
直に自分たちの予選の時間となる。ヘルメットを被り、加藤主任に曇り止めのガムテープを鼻の上に被せて貰う。
オーバーレーシングの皆さんは「エンジンスターター」なる物を持ち込んでいるので、暖気の為にエンジン掛けるのもその場で出来て良いのだが、貧乏チームの我が部隊は勿論その様な物は無く、雨の中のパドックを2人で押し掛けだ。
いよいよ予選がスタートする。時間はたったの10分間。降りしきる雨の中、視界も悪い、コースも所々川の流れの様な状態になっている。そんな悪条件の中、僅かな時間の中でタイムを出さなければならない。だが焦りは禁物だ。
ヴィンテージクラスは皆さんそうなのだが、レインタイヤや、ましてやタイヤウォーマー等と言う代物には無縁のクラス(一台だけ、ヴィンテージクラス総合優勝したCB350Fがちゃんと出走前に装着していた)。皆、晴天用のタイヤのままコースイン。コーナーの出口の度にお尻がズルッ!メガネが曇って前が見えない!体が強張って思う様にマシンを操れない!なんて下手くそなんだ!などと心の中で叫んでいるうちに予選が終わってしまった。結果は総合で10位、エンフィールド中では2位だが1位の高橋聡選手は章典外なので一応1位という事になる。加藤主任も喜んでいるのでまあ、由としよう。
決勝は2時過ぎ。パドック内のレストランで激しい雨の中で行われている他の予選を見ながら皆でブランチを取る。
雨脚だけではなく、強風も出てきた決勝1時間ほど前にブリーフィングが行われ、色々な注意点を聞く。
今年は決勝スタート前に、野点(のだて)のお茶会が開かれ抹茶が振舞われるそうだ。
レースにお茶会?私も思った疑問だが、話を聞くと納得。武家の茶道である「上田宗箇流」の宗家の方がお茶を立ててくれるらしい。ライダーを出陣する武士に、レーシングスーツを鎧に、バイクを馬に見立て野点でお茶を振舞ってくれる趣向だったのだ。自分の教養の無さを思い知った。
それは、入場ゲートの脇に設けられた会場にて決勝レース待ちの選手達に、出陣を祝って抹茶が振舞われたのであった。綺麗な和服姿の女性が運んできてくれたので、これまた特別美味しく感じたのは私だけであったのだろうか・・・。
食事も終わり腹が一杯になると何だかとても眠くなった。最後の点検をしている加藤主任を残し、バンの中で少し睡眠を取る事にする。悔しいが、ここのところの疲れが溜まっているのが自分でも分る。やはり歳には勝てない。
30分ほど寝て体が痛いので眼を覚ました。丁度いい時間。レーシングスーツに着替えていると加藤主任より電話。「もう皆さん出走前ピットに集合してますよ〜」との事。急いで支度を終え、向うがストレッチをするのを忘れた事に気づく。まあいいか。
野点の会場で川野氏が手招きをして私を呼んでいる。挨拶をして近づいていくと、私を最前列に座らせ、和服美人も隣に座らせ記念撮影をしてくれた。先に述べたようにとても美味しいお茶でした。
前のクラスの決勝レースが終わり、いよいよコースイン。決勝のスタート時間が近づいて来る。スタート方法はエンジンを掛けて1周し、各自自分のグリッドに着いてからシグナルスタートとなる。
選手紹介の間、記念撮影などして友好を深めながらレースの作戦も忘れずに頭の中で練っている。
レースクイーンの掲げたプラカードがスタート1分前を告げる。加藤主任がキックにてエンジンを始動し、レーシングスタンドを取り去ってくれてコース脇に戻っていく。旗が振られ1周のウォーミングアップラン。先ほどから少し雨脚が弱まってきたのだが、コースは所々川の様な状態になっている事がみてとれた。視界も悪い。コースを1周し自分のグリッドに戻り、コース上のシグナルを見つめる。緊張の一瞬だ!
シグナルの点滅が止り、一斉にスタート!私もまあまあのスタートを切り順位をキープして第一コーナーに侵入していく。雨の為、走行ラインが1本で皆そのラインをテールツーノーズでトレースして行き、左の2コーナーその先のS字コーナー、さらにその先の登り右ヘヤピンコーナーにと、前を走るCB450に遅れを取らないように慎重に行ったのだが又してもシフトミスをしてしまった。前車との差は約100メーター位離れてしまった。身体全体が雨に対応できずに強張っている。身体も車体も予選の時より重たく感じる。ヤハリ身体をストレッチして起こしてなかったからだろうか・・・。しかし、ひたすら前車を目指して慎重に各コーナーをクリヤーして行く。すると最終コーナー手前では約50メーター程に差が詰り、少し希望が湧き又、欲も出てきてしまった。
少しでも差を詰めるべく、いつもとは違うラインを取り、少し早目にスロットルを開ける。その事が裏目に出て最終コーナーを抜けたところで頭に描いていたラインよりかなりアウトに膨らんでしまい、ほんの少しリアタイヤがゼブラに乗ってしまった。その瞬間いきなりリヤスライドし、カウンターを当てた途端にハイサイドを起こし投げ出されてしまった!
オープニングラップの最終コーナーで、不覚にも私達の「モト・ルネ」は終わりを告げた。
今回、最大の参加目標である「お金をそれ程掛けずにどれだけ戦えるのか」は、十分クリヤー出来たと思うが、もう一つの目標だった「表彰台」に手が届いていたのに結果が残せなかったのは、とても残念な結果となってしまった。レースに「・・・たら、・・・れば」は無い。「敗戦の将、多くを語らず」としよう。そして、この結果をバネにし、来年は出来れば新しいマシンでまた挑戦したいと思っている。その時は、皆さんに協力を求めるかも知れませんが、一つ宜しくお願いします!
転倒後、右肩、手首、肋骨と3箇所骨折している事が判明し、加藤主任の運転でレース当日のうちに岡山より東京に戻り、使えなくなった利き腕の代わりに慣れない左手にてこの文章を打ち込んでます。医者からは全治3ヶ月と言われてますが、何とか早く完治させて雪辱戦に向けてトレーニングしようと思っている次第です。
終わりに、大変お世話になりました「オーバーレーシング」の社長以下の皆様方、エンフィールド、ヴィンテージクラスにエントリーしていた皆様方、また部品、加工作業のお世話になった関係各位の皆様方に、この場を借りましてお礼申し上げます。
次回は今回の教訓を生かし、きっと良い報告が出来る事を皆様の前で誓い終りにいたします。
|